悪魔の海賊船〜捕虜になったプリンセス〜【序章】祖国の裏切り

大海原に浮かぶ、一隻の海賊船。

『史上最悪の海賊団』として各国から指名手配を受けている、ベレッタ海賊団の船だ。船長のカラマは残虐な男として有名で、彼の顔を見ただけで震え上がり、足腰が立たなくなる人間もいるほどだ。

そんな海賊団の船の甲板に、海賊船にはまるで似つかわしくない美女が、横たわっている。

栗色の髪が美しいその女性の両手は、後手に荒縄で縛られている。ブルーのドレスを着ているが、おそらく値の張るものであろうそれは、ところどころ破れてしまっていて、それどころか、女性自身の頬も、まるで殴られでもしたように、赤く腫れ、看板に横たわってたためか、泥や埃で汚れていた。

彼女の名前は、レイラ。数時間前に、人質として捕らえられた、とある王国のプリンセスだ。齢は、見たところまだ10代だろうか。ところどころ、あどけなさが残っている。

今や見るも無惨な姿で横たわるレイラの周りには、対照的に、見るからに野蛮で、獰猛で、凶悪そうな男たちが立っていた。ざっと、10人以上はいる。男たちは、いやらしい目線を隠そうともせずーーそれどころか、自慰をしている男までいるーー、レイラを爪先から、髪の毛の一本一本まで視姦する。

レイラはその視線を跳ね返すように、男たちを睨み上げる。王女としてのプライドゆえか、助けがくると信じているのか、あるいは自分の状況が理解できていないのか。

この、一見絶望的に思える状況においても、レイラの瞳は光を失っていなかった。ギリッと歯を食いしばり、少しでも拘束を緩めようと、手を動かす。

すると、男たちの1人がレイラの前にしゃがみ、汚い手で、レイラの美しい髪を掴むと、ニヤニヤと笑いながら、言った。

「いいかげん、状況を受け入れな。お前は、祖国に見捨てられたんだよ。国には第一王女がいるし、見た目しか能のない、お前みたいなアマはいらねェってな」

その言葉に、レイラは再び歯をくいしばる。

「そんな訳ないわ……!」

そんな訳はない。祖国が、自分を見捨てる訳はない。レイラはそう思いながらも、しかし心のどこかで、男の言葉が真実なのだとも悟っていた。

第三王女として生まれた自分の命と引き換えに、海賊たちが提示した金額は、国の財政状況を考えれば到底支払えない額であったから。

「さて、おじょうちゃん。そろそろ決断しな。この船で奴隷として生きていくか、それとも海に捨てられるか。……賢い選択をするんだな、王女様よ」

⑴ 海賊たちの奴隷になる
⑵ 王女の意地にかけて抵抗する